二ノ宮知子『のだめカンタービレ』を題材に、Look4Wieck.comのおすすめ名盤・名著をご紹介しております。今回は第8巻 Lesson 41〜46の登場曲で。
のだめを契機にいろいろ聞くぞ!でも、何から聴いたら・・・とお迷いの方に、楽しんで頂けたら幸いです。書き手の趣味がありますので、そこはご容赦を!
二ノ宮知子『のだめカンタービレ』第8巻 曲目Index
Look4Wieck.comが選ぶ、迷ったときのおすすめ名盤《第8巻》Lesson 41〜46
- 巻頭扉絵の楽譜&Lesson45) ショパン:練習曲 Op.10-4 嬰ハ短調
- Lesson41) シューマン:劇音楽《マンフレッド》序曲 Op.115
- Lesson41) モーツァルト:オーボエ協奏曲ハ長調 K.314 (285d)(既出。第7巻の該当部分へ)
- Lesson42) ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68(既出。第4巻の該当部分へ)
- Lesson43&44) シューベルト:ピアノ・ソナタ第16番 イ短調 D.845
- Lesson45) サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 イ短調 Op.33
- Lesson45) J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第16番 BWV885
- Lesson45) リスト:超絶技巧練習曲 第5曲《鬼火》
- Lesson45) ドビュッシー:《喜びの島》
- Lesson46) ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35
- Lesson46) ラヴェル:スカルボ 〜《夜のガスパール》の第3曲
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310(300d)とシューマン:ピアノ・ソナタ第2番 ト短調 Op.22は、第9巻で取り扱っております。
◎フレデリック・ショパン:練習曲 Op.10-4 嬰ハ短調
巻頭扉絵の楽譜&Lesson45 のだめ マラドーナ・ピアノ・コンクール 一次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
マウリツィオ・ポリーニ演奏 ショパン:12の練習曲 作品10/作品25
20世紀後半のピアニズムの代表格と申しましょうか。いろいろ意見はあれど、唖然とすること間違いなし。はじめて聴いた時の驚きはいまでも思い出せます。イタリアのピアニスト ポリーニの代表的録音の一つ。
横山幸雄演奏 別れの曲 ~ショパン : エチュード全集
こちらは日本の現代の名ピアニスト 10代で、ショパン・コンクール3位に入賞した横山幸雄氏の若き日の話題の名盤!
おすすめ名著:
遠山 一行 著『カラー版 作曲家の生涯 ショパン(新潮文庫)』
新潮文庫のカラー版作曲家の生涯の一冊。このシリーズは作曲家の伝記としては、一番お求め易く、おすすめもできるものです。あまり音楽的なややこしい議論に立ち入らず、伝記的な紹介をメインにした内容。多数のカラー図版で、ショパンゆかりの街や建物の奇麗な写真、家族・友人等々の肖像が目を楽しませます。巻末に主要作品目録がちゃんとついているのも長所です。
◎ロベルト・シューマン:劇音楽《マンフレッド》序曲 Op.115
Lesson41 RSオーケストラの第一回公演、第一曲。
おすすめ名盤:
ジュゼッペ・シノーポリ指揮/ウィーン・フィル シューマン:交響曲第2番&マンフレッド序曲
イタリアの指揮者シノーポリの名盤。マンフレッド序曲は、まさに劇の序曲というはきはきした演奏。交響曲第2番とカップリングされたこのCD、粘り気や停滞感なくとも大変劇的!発表当時、評判になった一枚です。
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィル シューマン:交響曲第4番&マンフレッド序曲
こちらも長らく名盤と名高いフルトヴェングラーの録音。交響曲第4番ともに大変ユニークで素晴らしい演奏です。いかにもフルトヴェングラーらしくうねうねとしながらこちらの感情の根っこからゆさぶられるような音楽となっています。
おすすめ書籍:
ロベルト・シューマン 著『音楽と音楽家 (岩波文庫)』
評論活動にも積極的だった作曲家シューマンによる見事な警句が並ぶ名評論です。文章もまたシューマンらしい独特さ。自らの作品は勿論、メンデルスゾーン、ショパン、リスト、ベルリオーズ、そして埋もれていたシューベルトの交響曲等々を見事に紹介します。お時間あれば、紹介記事 ロベルト・シューマン著『音楽と音楽家』― 情熱を言葉に!もご覧下さい。
◎フランツ・シューベルト:ピアノ・ソナタ第16番 イ短調 D.845
Lesson43 のだめ、マラドーナ・ピアノ・コンクール 一次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
輸入盤マルコム・ビルソン演奏 シューベルト・ソナタ全集 No.4 D664、D566、D845
フォルテピアノによるシューベルト。フォルテピアノ復興に努めた第一世代といってよいでしょうか?モーツァルトのピアノ作品全集のファン・オールトも師事したマルコム・ビルソンの演奏です。現代ピアノの前身だから、「表現力に乏しい」・「素朴」などと思っていらっしゃる方には、ぜひご一聴を。
輸入盤ウィルヘルム・ケンプ演奏 シューベルト・ソナタ全集
ドイツの往年のピアニスト ウィルヘルム・ケンプによるシューベルトのソナタ全集。ケンプ一流の漂う様な柔らかい表現が魅力。どの曲も、終始一貫柔らかすぎるのはちょっと難点やも。いずれにせよ、現在一番安い現代ピアノによるシューベルトでもあることも強みです。
おすすめ書籍:
村田 千尋 著『作曲家◎人と作品 シューベルト』
作曲家◎人と作品シリーズのシューベルト。時間軸がごちゃごちゃすると、リンク先のAmazonのレビューにありますが、それはその通りで多少難あり。とは言え、薄幸で貧しく、世間に不当に無視されたシューベルト・・・というありがちなイメージを覆す事実を多数記載(早くに周囲に注目されたこと、交友関係・シューベルティアーデの実態etc)。また、主要作品紹介では、リートや交響曲だけでなく、合唱曲、歌曲、ミサ曲ほかも丁寧に紹介されており、上述の欠点を十二分に補ってあまりある内容と思います。
◎カミーユ・サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 イ短調 Op.33
Lesson45 RSオーケストラ公演での演奏曲
おすすめ名盤:
ロストロポーヴィチ(Vc) ジュリーニ指揮 ドヴォルザーク&サン=サーンス:チェロ協奏曲
まずは人気のある二つの録音を。一つ目は、スラヴァの愛称をもつ世界的名チェリスト ロシア出身のムスティスラフ・ロストロポーヴィチの独奏。沈鬱な雰囲気をつくる細かな表情が面白いです。映像で楽しまれたい方には、輸入盤であれば同じジュリーニとの共演のDVDが出て居ります。
デュ・プレ(Vc) 、チェリビダッケ指揮、バレンボイム指揮 ドヴォルザーク&サン=サーンス:チェロ協奏曲
こちらも人気盤。病のため、若くして引退を余儀なくされたイギリスのジャクリーヌ・デュ・プレ独奏。サン=サーンスの指揮は夫のバレンボイムがつとめます。どこからどう聴いても、デュ・プレと思わせる激しく、独特な表現。彼女を見いだした一人である指揮者バルビローリ曰く、「若いうちはやりすぎる位がいいんだよ」と。
映像を見るとまた印象が変わるやも知れません。協奏曲は、サン=サーンスではなくエルガーのものになりますが、輸入盤DVD Jacqueline du Pré : in Portraitをどうぞ。
輸入盤ピエール・フルニエ(Vc) サン=サーンス:チェロ協奏曲ほか
時に感情過多をもじさない演奏を好まない・・・という方には、こちらを!ピエール・フルニエらしく端整で、人によれば、なにもしていないと感じてしまうかも。演奏者で随分違うものです。nobleといわれたフルニエを、あの放埒なフリードリヒ・グルダが慕っていたというのは、なかなか興味深い話であります。
おすすめ書籍:
ジャン・ミシェル ネクトゥー篇『サン=サーンスとフォーレ―往復書簡集 1862‐1920』
ベルリオーズからドビュッシーの間のフランス音楽は、ともすればすっかりとばしてしまいがちです。サン=サーンスの手に入り易い日本語の書籍がないのが残念ですが、こちらのフォーレとの書簡集で、ベルリオーズとドビュッシーの間に、どんなフランスの作曲家が居て、なにを考えていたのか聞いてみるのも意義あることと思います。
◎J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第16番 BWV885
Lesson45 のだめ、マラドーナ・ピアノ・コンクール 二次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
グレン・グールド(P) バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻
今更なにを言うべくもないグレン・グールドの名盤!前知識もなにも要らず、聴けば面白い!という中々ない録音。グールドによる平均律クラヴィーア曲集の第1巻とあわせてどうぞ。
鈴木雅明(harpsicord) バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻
こちらはバッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者として著名な鈴木雅明氏の録音。鈴木氏の演奏は歴史的にバッハおよびこの時代の様式を研究した成果。但し、所謂古楽奏者がみな一様の演奏をしていないことにご留意を!この演奏の中の鈴木氏自身の音楽的趣味もぜひお楽しみください。
楽器もハープシコードですから、上のグールドの録音とぜひ併せてお聞きになることをおすすめ致します。判り易い所では装飾音の処理、フレージングやテンポで、バッハに対するさまざまなアプローチがあるな・・・と両者に感心されるのでは?
鈴木氏も平均律クラヴィーア曲集 第1巻を録音しております!
おすすめDVD:
DVD B.モンサンジョン製作 グレン・グールド:ヒアアフター
グールドも映像を見て、話す言葉を聞くと、随分印象が異なることがあるかも知れません。グールドの映像は、TVで取り上げられることも多いので、既にご覧のみなさまも多いことでしょう。どれを見ても楽しいものながら、一つだけに絞っておすすめするのは、この作品。輸入盤ですが、日本語字幕も入っているのでご安心を。
本人のインタビューや演奏映像を中心に、時にイメージ映像的だったり、心酔するファンを感動的に写したりとなかなかユニークな内容です。
◎フランツ・リスト:超絶技巧練習曲 第5曲《鬼火》
Lesson45 のだめ、マラドーナ・ピアノ・コンクール 二次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
横山幸雄(P) リスト:超絶技巧練習曲全曲
この曲を聴いて、「すごい!」とは思うけれど、「曲自体が技巧を超えて面白いのか・・・」と感じて居た方には、横山氏のこちらの録音をどうぞ!快速で、派手なところはまずもってないのですが、「この曲はこんな曲なんだ!」という発見がたくさんありました。爽やかにして、その中に詩情を漂わせる珍しい超絶技巧です。
ボリス・ベレゾフスキー(P) リスト:超絶技巧練習曲全曲
こちらはロシア出身の名人ベレゾフスキーの名盤。ベレゾフスキーは大きな絵画を描くかのようです。こちらはこちらで、激しくさの中にも曲の面白さを失わない名演奏。このCDの数年後の2002年のライヴ演奏DVDも出て居り、映像で見ると、とんでもない曲だとよく判ります(今現在、在庫なしなのが大変残念です。口を開けっ放し!)。
おすすめ書籍:
横井 雅子 著『ハンガリー音楽の魅力―リスト・バルトーク・コダーイ』
ハンガリーの音楽家三人を中心的に取り上げて、その魅力を探ろうという書籍。作曲家だけでなく、文中に言及される演奏者の名前などから、ハンガリーの音楽および音楽家に親しくなることがでしょう。ハンガリー音楽という視点で、とっつき安い書籍がない中で、なかなか好著と思います。
◎クロード・ドビュッシー:《喜びの島》
Lesson45 のだめ、マラドーナ・ピアノ・コンクール 二次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
ウラディミール・ホロヴィッツ(P) 1966年 カーネギー・ホール・コンサート
長らくコンサート活動を停止していたホロヴィッツが、再度舞台に上がったのが1965年。待ちに待ったファンの喜びを伝えるドキュメントなどは皆様もご覧になったことがあるかと存じます。これは、その翌年のニューヨークはカネーギー・ホールのライブ録音。ライヴでの、ホロヴィッツはまたひと味違う!という作品です。
モニク・アース(P) ドビュッシー:ピアノ作品全集第1集
フランスの女性ピアニスト モニク・アースのドビュッシー ピアノ作品全集。その第1集に、《喜びの島》は収録されています(第2集はこちらです)。ドビュッシーの作品も全曲時代順に通して聴くと、最初からドビュッシーらしさを感じながらも、段々そのユニーク差が強まるようで、面白いもの。モニク・アースの演奏は、細々大変気をつかいながらも、全体として特別気になる癖もなく、おすすめしやすいものと思います。
おすすめ書籍:
松橋 麻利 著『作曲家◎人と作品 ドビュッシー』
お求め易く、内容も充実した音楽之友社の作曲家◎人と作品シリーズ、その中でもこのドビュッシーを扱った巻は、特にできが良いと思います。事実の確認の中に逸話が適度に織り込まれ、読んで楽しく、ためになるの典型。その逸話が、読んでいてクスっと笑い出しそうなものも幾つも!未読でしたら、ぜひお手にどうぞ。
◎ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35
Lesson45 No.21、マラドーナ・ピアノ・コンクール 三次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
ブラームスにピアノソロ曲に関しては、輪を掛けて、おすすめを迷う所。ブラームスのピアノ曲というと、ソナタの第三番、間奏曲、ラプソディー、それにこのパガニーニの主題による変奏曲と言った所が、聴かれると思いますが、作品集ないしは全集として通して聴くと、決してマイナーにとどめていい曲ばかりではないなと。かくなる次第で、Boxセットから選びます。
この曲に関しても、単品で一枚もので揃えるのも選択肢がいま一つかと思いますので、ご了承を。
一番好みのものは、輸入盤ペーター・レーゼル(P) Works for Piano(13枚組)。ドイツのピアニストで、この13枚組Boxの中に、ブラームスは五枚分収録。低音がしっかりしていて、これを聴いて以来一番ブラームスらしいと感じています。他の作曲家の8枚分も総じて面白く聴けます。
他に評判の良い、Boxセットは、輸入盤ユリウス・カッチェン(P) ブラームス:ピアノ作品集(6枚組)。価格的にも大変魅力。
その他、国内盤が唯一出ているものだですと、やはりドイツ出身の方ですが、ウィルヘルム・ケンプに師事したゲルハルト・オピッツ(P) ブラームス:ピアノ作品全集(6枚組)の録音。近年、来日コンサートもあったので、ファンの方も多いのでは?
いずれせよ、じっくりと5枚、6枚とさまざまなブラームスのピアノ曲を聴くと、意外と面白い曲が多い事で、楽しんで頂けると思います。
おすすめ書籍:
ブラームス回想録集 第1巻 ヨハネス・ブラームスの思い出
ブラームスの友人、弟子、ピアノの生徒等々からなる14人のブラームス回想録をまとめたもの。日常生活の些事から、音楽に関する考えまで、深刻な胸の内の吐露から、気軽な冗談まで、話題は実に豊富で、お読みになる方でいろいろな楽しみを発見できる本です!ブラームス・ファンならずとも19世紀の音楽に興味があればぜひ!という作品。全三冊(ブラームス回想録集 第2巻、ブラームス回想録集 第3巻)。
◎ラヴェル:スカルボ 〜《夜のガスパール》の第3曲
Lesson45 No.21、マラドーナ・ピアノ・コンクール 三次予選の課題曲。
おすすめ名盤:
輸入盤 マルタ・アルゲリッチ(P) 独グラモフォン ピアノソロ録音集(8枚組)
カリスマ女性ピアニスト、現役で一番人気と言って良いでしょうか、マルタ・アルゲリッチのピアノソロを集めた8枚組。アルゲリッチの演奏であれば何をか況んやですが、このBoxセットながら、新譜一枚ほどの価格というのも魅力的。ラヴェルの曲は、CD1の《水の戯れ》、CD5の《夜のガスパール》、《ソネチネ》と《優雅で感傷的なワルツ》を収録。
サンソン・フランソワ(P) ラヴェル:ピアノ曲全集 第1集
ベルトランの散文詩に想を得た作曲されたこの作品。フランスに留学してフランソワと同時期にマルグリット・ロン夫人のレッスンに参加していた日本の名ピアニスト 園田高弘氏の伝える所によれば、ロン夫人が「フランソワほど『スカルボ』を体現できる人間はいない」と言っていたそうです。また、園田氏自身、「ショパンやラヴェルの魅力に触れた人が一度は通らなくてはいけない道がフランソワの演奏だ」とも。
初演当時、「どうやれば正しい音が弾かれたか確かめられるのか」と揶揄されたこの奇抜な曲。フランソワの体現をお確かめください(ドビュッシーの曲と併せた輸入盤のフランソワの6枚組Boxがお買い得です!)。
おすすめ書籍:
アービー・オレンシュタイン 著『ラヴェル 生涯と作品』
300頁弱の書籍で、前半が伝記、後半が主要作品解説となっております。伝記はファクトを重んじる記述で、レヴェルの生涯を大まかにしっていないと、筋道を失いかねませんが、学生時代の詳細など細かい内容が大変面白いもの。それ以上の長所が後半の主要作品解説!管弦楽曲、ピアノ曲、声楽曲その他の60曲以上を比較的長めに説明。どれも聴いてみたいと興味をそそられることでしょう。
のだめカンタービレ第8巻についての、Look4Wieck.comのおすすめ名盤・名著でした。
最新刊にはまだまだ急がねばでありますが、なにはともあれ一風変わったご紹介になっていれば幸いです。タイムリーなご購読には、ぜひRSSをご活用ください。
では!
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