クラシックを聴き始めた皆様へ の第四回。
前回は、クラシック音楽を片っ端からなるべく安く聴いてみる方法!と題しまして、何分いろいろな作曲家や演奏者がいますから、最初は分けもなくいろいろ聴いてみるのも良いですよという話でした。そうするとかえって、自分の好きな傾向が掴めたり、また、自分が知らなかった楽しみに出会え易くなるかなと考える次第です。
さて、本日の話は、そうやって聴いていく中で良いと思う演奏、今ひとつと思う演奏がどういうものなのかな・・・とちょっと意識的になるにはどうすれば、、、という話です。
いろいろ聴いて行くと、あまりにいろいろなスタイルの曲や演奏があって、自分もさまざまなものを良いと思ったりして、結局なにがなんだか、誉めればみんな誉められるというところになろうかな思います。所詮、娯楽だから楽しめばいいじゃない!という考え方もありますが、ほんとうにそうなのか中々難しいところ。
では、しかめっ面して、「これはダメ」「あれはダメ」と思っても、結構、自分が気に入っている演奏と違うから無闇と否定しがちになったりということもあります。私も結構そんなことがあって、後で「やっぱりこりゃいいな!」と思い直して反省することも頻り。
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ではどうするか?というとこれも中々難しい。本来自分で楽譜を見て検討して、その前にもさまざ勉強して、楽器も嗜んで、人と合奏して・・・などいろいろ努力が必要かと思うのですが、私だって聴くのが主ですし、現実にはそうは参りません。愛好家にもそういう方は多いと思います。
それにあんまり難しいところは兎も角、ハーモニーがちゃんと奇麗に響いているか?無闇に派手に要所要所浮き立たせているだけではないか?なんてところが結構あやしい演奏もあるのが昨今のような気も致します。←生意気申しました!
そこで!
ここが良い、ここがどーも、こんな風にしたら?それはなんでかと言うと・・・とプロが語っている素材をいろいろ見てから、いろいろ聴いて行くと、さまざまな取っ掛かりが増えて、楽しくなるかな!?と考える次第。決して、数は多くないのですが良いものがいろいろ出ています。
先ずは指揮者とオーケストラのリハーサル風景とその実際の演奏を収めたもの。
ジェネオン・エンターテインメントから名指揮者の軌跡というシリーズが安価で発売されていますが、これ実に素晴らしい!特にお薦めは上に写真を挙げたDVD 名指揮者の軌跡 Vol.1 カルロス・クライバーと右のDVD 名指揮者の軌跡 Vol.2 フェレンツ・フリッチャイ。他にVol.3 ゲオルグ・ショルティやVol.5 ロジャー・ノリントンなど全部で8巻出ています。
指揮者がどのようなことに気を使って音楽を作ろうとしているのか、それをどういう風に指示を出しているのか、また実際にオーケストラの響きがどういう変化を見せたか?その響きがふくよかになったり、わざと荒々しくすることで躍動感が出たり、また前後の部分とのつながりが出て来たり、、、中々面白い物です。
ピアノ演奏に付いても、良い物がありまして!
例えば、二枚組のDVD『バレンボイムのマスタークラス』 。NHKの衛星放送でちょっと前に毎月放送されていたのでご存知の方も多いと思います。
これは六人の若手ピアニストを招いて、ベートーヴェンのソナタのとある楽章をそれぞれ弾いて貰い、ここはどう、あそこはどうと議論していくもの。私も半知半解ですが、どういったことを気にかけて演奏するのかそういう姿が垣間みられて面白いです。
バレンボイムの言うことが正しいのかどうかは私も判断できませんが、指摘に併せて、大きなラインが出て来たり、ある音型の繰り返しとそのリズムが際立ったり、特徴的な和音・不協和音が目立ったり。音の違いがさまざま議論されて、それがどう違うのか聴いているだけでも楽しいもの。お客さんとの質疑応答も大変刺激的。
惜しむらくは日本語版が未発売故、この輸入盤のDVDしかないこと。話している言葉は英語、字幕は仏・独・スペインで、クローズドキャプションはなし。
こうなると英語にちょっと自信がないと楽しめないのですが、日本製の日本語の素晴らしいDVDが出ています。Amazon.co.jpの発売形態は和書。60頁ほどのテキストがついていますが、基本はDVDで見るものです。
井上直幸 ピアノ奏法I《作曲家の世界 バッハからドビュッシーまで》
井上直幸 ピアノ奏法II《さまざまなテクニック―タッチとペダリング》
バッハからドビュッシーまでさまざまな作曲家の作品を取り上げています。特に響きに対する注意が多いところも良いと思います。
基本的にはピアノを弾かれる方向けの教材ではありますが、作曲家の意図をどう汲み取るか、どんな音を出そうとイメージするかそういう話とともに、実際に弾かれる音の響きの違いを耳にすることは、ピアノを弾かない聴くだけの愛好家にもさまざまな示唆を与えることがあると思います。
結局、音楽は音の芸術ですから、
先ず持って響きの違いを耳にする感性が重要なのかな・・・と。
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上のどのDVDもそういう意味では、音の違い・響きの違いに大変注意を促されるもの。
どの演奏家もある意見を押し付けるのではなく、さまざまに考えさせて、答えを見つけて行こうという姿勢は共通と思います。
では!
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