輸入盤では少々手に入りにくかった輸入盤のウィルヘルム・バックハウスの二度目のべートーヴェンのピアノソナタ全曲集が安価のBox8枚組で再販されております。
9月2日に発売されたばかりで価格も全集としてはお手頃です。和音の響きが充実した正統派な演奏。ベートーヴェンのソナタ全集のリファレンスとも言えるもの!
1950年代後半から60年代後半に掛けてステレオ録音されたもので、29番の《ハンマークラヴィーア》ソナタのみバックハウスの逝去ゆえに1952年のモノラル録音から流用されております。
晩年の演奏ゆえ、ところどころムラがあるという指摘もありますが、充実した和音の響きと変化が素晴らしく、奇抜さのない表現が曲そのものを浮かび上がらせるかのようです。わたしもアニー・フィッシャーのフンガロトン盤、ウィルヘルム・ケンプの独グラモフォンモノラル盤、元々アマデオ盤として発売されていたグルダの全集などと共に愛聴する録音の一つ。
近頃、主観的に弾かれて、時々は美しいけれど、大きな流れですとか、全体の曲の構成が浮かばない演奏が増えていないでしょうか?そんな中で、往年の名盤はかえって新鮮かも知れません。
ベートーヴェンのソナタには、三大ソナタとして広く知られているもの以外でも、さまざま聴きやすい名曲があります。新譜三枚ほどの価格で名演が手に入りますので、全集をお持ちでない方にはぜひご検討されては如何でしょうか?
どうしても国内盤で!という方には、幾分割高になりますが、こちらが国内盤8枚組です。
なお、バックハウスにはベートーヴェンのピアノ協奏曲全集と《ディアッベリ変奏曲》を併せた素晴らしい録音もあって、こちらも併せてどうぞ!協奏曲の指揮とオーケストラは、シュミット=イッセルシュテット率いるウィーン・フィル。
《ディアッベリ変奏曲》もベートーヴェン最晩年のピアノの大曲で、大変面白いです。ここでのバックハウスの演奏の例えば終曲のアリアの哀しげな美しさは他にないと思わせます。右の写真はその国内盤(3枚組)。輸入盤は今現在絶版中のようです。
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ベートーヴェンのソナタは全部で32曲。頭から順番に聴いて行って、ベートーヴェンの作風の変化を聴くのも楽しいものです。
初めてお聴きになる方で、順番に聴くのはちょっと億劫という方には、お気に入りの曲を見つけやすいようにするに、ちょっとした案内を以下に!無理矢理仕分けしたところもありますが、そこはご容赦を!難しい話は出来ないので、あくまで私のゆる〜い感想です。
情熱的な曲・勇壮な曲
- ピアノ・ソナタ第5番ハ短調Op.10-1
- ピアノ・ソナタ第8番ハ短調Op.13
- いわゆる《悲愴》です。いかにもベートーヴェンです。曲と言うより物語。
- ピアノ・ソナタ第21番ハ長調Op.53《ワルトシュタイン》
- 冒頭からして爽快でかっこいい!
- ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調Op.57
- 《アパッショナータ 熱情》のあだ名のある名曲です。
- ピアノ・ソナタ第27番ホ短調Op.90
- 悲壮感がただよう出だし。それでも一歩前にでるという静かな決意と言いますか。小曲ですが好きな曲です。
- ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調Op.106
- 《ハンマークラヴィーア》と呼ばれます。型破りに壮大です!迫力の第一楽章から、軽快でユーモラスな第二楽章、清澄な第三楽章、伽藍でもくずれるような第四楽章と「なんだなんだ!?これ、すごい!」の小一時間!
- ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109&第31番変イ長調Op.110&第32番ハ短調Op.111
- 後期のソナタは、時に幻想的で、はかなげだったり、また勇壮だったりと性格もいろいろな度合いが高まり、素晴らしいもの。取りあえずここに入れました。
切ない曲・物悲しい曲
- ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調Op.2-1
- 最初のソナタですが、やっぱりベートーヴェンという感じです。ありきたりのソナタっぽくて、やっぱり主情たっぷりです。
- ピアノ・ソナタ第12番変イ長調Op.26
- 隠れ名曲(?)と思ってます!そんなことを言ったら、みんなそうですが、、、
- ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調Op.27-1
- ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2
- 所謂《月光》です。有名な第一楽章、わたしは激しい終楽章も好き!幻想的に分類してもいいですね。
- ピアノ・ソナタ第19番ト短調Op.49-1
- ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調Op.78
- かわいらしい感じもしますが、第一楽章はなんだかせつせつと・・・
- ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調Op.81a《告別》
- 親しいな友人に「さようなら・・・」という曲。メランコリックでかわいらしくも、物悲しいです。
神秘的な曲・幻想的な曲
- ピアノ・ソナタ第17番ニ短調Op.31-2
- 所謂《テンペスト》。バックハウスの演奏は奇麗ですよ!
楽しげな曲・かわいらしい曲
- ピアノ・ソナタ第2番イ長調Op.2-2&第3番ハ長調Op.2-3
- 冒頭からして、はねるリズムが楽しいです。第3番はちょっと情熱的?
- ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調Op.7
- ピアノ・ソナタ第6番ヘ長調Op.10-2
- ピアノ・ソナタ第7番ニ長調Op.10-3
- ピアノ・ソナタ第9番ホ長調Op.14-1
- 第二楽章は物憂気でそれがまた良い!
- ピアノ・ソナタ第10番ト長調Op.14-2
- ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調Op.22
- こういう一見普通の曲がまたいろいろ変化があって楽しいです。
- ピアノ・ソナタ第15番ニ長調Op.28
- ピアノ・ソナタ第16番ト長調Op.31-1
- ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調Op.31-3
- 良い曲です!かわいく楽しく、ベートーヴェンのイメージが変わるかも!?第三楽章がまたいいのです。
- ピアノ・ソナタ第20番ト長調Op.49-2
- ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調Op.54
- ピアノ・ソナタ第25番ト長調Op.79
- 15番や16番が好きな方にはお気に入りになると思います!
- ピアノ・ソナタ第28番イ長調Op.101
- 全体を見て楽しげに入れましたが、(大好きな)第一楽章だけ見るとまた違って、どこか切ないのです。
クラシックの曲は楽章毎に、また、楽章の中でさまざま変化するので、こういう一面的な性格分けは難しいので、あくまで取っ掛かりにしてください!
輸入盤をご覧になると判りますが、曲のあだ名が全く書いてないものが多うございます。《悲愴》や《月光》などの他にも面白い曲はあるので、あだ名は気にせず、ぜひ、じっくりと全曲聴いてみてください。
片手にベートーヴェンの伝記をおいて、この曲を書いた頃はどんな生活だったのだろう、、、他にどんな曲を書いたのだろう、、、と聴きながら楽しまれても良いやも知れません。そんな風に考えながら、交響曲の全集を聴いてみたり、弦楽四重奏曲全集も、、、としていくと、段々興味が深まっていくのかも知れません。
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- ウィルヘルム・バックハウス :: Wilhelm Backhaus