躍動感溢れるリズム、ドラマティックに強音と弱音とを移り変わる旋律。
ミュンシュが指揮をすれば、ベルリオーズやラヴェルの曲が、より鮮やかに活き活きと聴こえてきます。少しも重々しくならず、颯爽としていることが印象的です。
普仏戦争後にドイツ領となったアルザス地方のストラスブールに、シャルル・ミュンシュが生まれたのは1891年。同地にて、合唱団を設立し率いた父の方針もあって、６歳からオルガンとピアノを始め、また、早い頃から父の合唱団の聖歌隊にも参加しました。
その興味は次第に鍵盤楽器からヴァイオリンへと移り、対位法や和声楽などの音楽理論の勉学も進めたそうです。まずはストラスブール音楽院にてヴァイオリンの指導を受け、卒業後は、ベルリンではカール・フ レッシュに、パリではルシアン・カペーといった当時の大ヴァイオリニストに師事。プロの音楽家としてのスタートは、まずはヴァイオリン奏者からでした。
第一次大戦が始まると、ドイツ兵として徴兵され、キャリアは一旦中断します。戦後、フランス領に戻った故郷ストラスブールに帰郷し、音楽院では教授職を得、また同地の管弦楽団でもヴァイオリン奏者の席につきました。1926年にはライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団に移籍。フルトヴェングラーやワルターの下でコンサートマスターを経験すると共に、たびたび指揮者の役に廻ることもあって、ついに本職を指揮者しようと決意したそうです。
1930年代にはパリに本拠地を移し、数々のオーケストラで指揮者を歴任。プーランク、オネゲル、ルーセルといった作曲家達とも親しくなり、初演を含め、多くの現代フランス作品を取り上げました。
第二次大戦後にはアメリカに活動の場を広げ、セルゲイ・クーゼヴィツキーの後を継いで、1949年から13年間、音楽監督としてボストン交響楽団を率いています。小澤征爾やシャルル・デュトワが、ミュンシュに師事したのも、このアメリカ時代の出来事。
ボストンでの仕事を終えて、故国に戻った最晩年、文化大臣アンドレ・マルローに請われ、パリ管弦楽団の初代指揮者に就任。フランス音楽の文化的イコンとして活躍を期待されましたが、翌年のアメリカでの演奏旅行中に訪問先のヴァージニア州リッチモンドにて、惜しくも客死しました。
パリ管弦楽団での仕事はおよそ一年のことですが、フランスのオーケストラに特有といわれる音の鮮やかさ・軽やかさを手に入れて、ミュンシュの最高の仕事がここにあると評価する声も多くあります。
2006年BMG Japanからミュンシュの録音が大量に限定盤で出されました。新たなミュンシュ・ファンも若い方に増えたかも知れません。ミュンシュの録音も多いので迷うところですが、比較的オーソドックスに最初の５つを選んでみました。その中でも一つというと、やはり、幻想交響曲でしょうか？
海外オーケストラ来日公演記録抄のミュンシュの頁:
ミュンシュの日本公演の詳細なデータ並びに滞日中のさまざまエピソードなど、大変面白い内容です。他にも様々なオーケストラ、指揮者の記録があり、ムラヴィンスキーの特設頁など非常に参考になります。
ボストン交響楽団のwebsite:
ミュンシュが長らく音楽監督を務めたボストン交響楽団のwebsite。楽団の歴史については、下部の”EXPLORE”をクリックすれば関連頁に飛びます。
The Boston Globe紙のコラム “The real Charles Munch?”:
少々スキャンダラスな内容ですが、ミュンシュはが戦時中ナチス占領下のフランスで活躍していたとの調査報告に関する記事。ファンの方はご安心を！記者はこの調査に疑問を持っており、ミュンシュが対独協力していた場合、なぜ戦後すぐに新政府から勲章を受けたのか？と結んでおります。