バッハ入門に最適の本では?・・・と、鈴木 雅明・加藤 浩子『バッハからの贈りもの』をご紹介ずみですが、本日取り上げるのは、
です。
前著はインタビュー形式で、一般の読者に大変判りやすく・読みやすい形で、バッハのさまざまな音楽、鈴木氏の音楽感・活動のあれこれを紹介する入門書。
今回ご紹介する書籍、『わが魂の安息、おおバッハよ!』は、演奏会のパンフレットや誌面への投稿など、折々鈴木氏が発表した文書を纏めたもので、性格は異なりますが、特に
- カンタータや受難曲などの声楽曲の音楽的・文化的・歴史的な詳細
- パイプオルガンという楽器の音楽的・文化的・歴史的な詳細
を知りたいという方には、大変示唆的な書籍です。
我々はバッハの声楽曲を、ついつい単なる音楽としてコンサートや居間で楽しんでおります。現代人がそういう受容をするのはやむを得ないことかも知れませんが、一曲一曲にこめられたメッセージは一体なんなのか、教会に集まる聴衆が合唱に参加するとはどういったことなのか、それをいま演奏するとはなんなのか等々、興味深い話がたくさんあり、さまざま考えさせられます。
パイプオルガンに関しては、著者自らオランダ、ドイツなど欧州各地のパイプオルガンを訪ね、演奏した話ですが、一言で“パイプオルガン”とくくってしまうこの楽器にこれほどの多様性があったのかとびっくり!です。バッハのオルガン曲の特質を楽器の面から考察する旅日記でもあり、また、それを各地の人々がどのように守ってこられたのかにも記述は及びます。
以上の事柄は、バッハの声楽曲やパイプオルガンに興味がない方にも、たいへん重要な話と感じて居ります。曲の背景や中身を考える際の姿勢は、他の作曲家の曲を聴く際にも参考になりますし、それらが歴史と文化の中でどういう役割を持っていたのか、たかだか一つの楽器であるパイプオルガンがどう守られて来て、今現在どう活用されているのかという話は、クラシック音楽という枠を超えて、「文化とは何ぞや?」といった広い話を考えるにも大変に役立つものと思います。
ちゃんと理解するには、専門的な知識な要するところもあって、私もその点、半知半解ですが、本書をご覧になる方は必ず貴重ななにかをもたらす・・・そう信じるものであります。
鈴木雅明『わが魂の安息、おおバッハよ!』目次紹介
目次をご覧になれば、また具体的に興味が湧かれるやも知れません。
- 第1章 わが魂の安息、おおバッハよ − バッハの宗教作品 …p.9
- J.S.バッハのカンタータ全集をはじめるにあたって
- マタイ受難曲
- ヨハネ受難曲
- ミサ曲ロ短調
- クリスマス・オラトリオ
- 第2章 皆様、ようこそおいでくださいました − BCJ定期演奏会巻頭言集 …p.65
- バッハのカンタータを中心にコンサートで取り上げた曲の簡単な解説。モンテヴェルディや、シュッツ、ヘンデルなどもちらっと登場。
- 第3章 演奏の現場から − 制作ノート …p.165
- これは楽団の方に向けての注意書きといったもので、楽譜片手にさまざま考察する方には楽しい章でしょう。
門外漢が見ても、楽譜や楽器、歌唱の際のドイツ語発音などなど、こんなにいろいろと考える事があるのだと斜め読みしても興味深いものです。 - 取り上げられているのは、60曲以上のバッハのカンタータ、同じくバッハのモテット BWV225-229とブランデンブルグ協奏曲 BWV1046-51
- これは楽団の方に向けての注意書きといったもので、楽譜片手にさまざま考察する方には楽しい章でしょう。
- 第4章
真夏のオルガン行脚 − バロック時代の鍵盤音楽 …p.255- 原点の響きをもとめて
- 夏の遍歴、北ドイツの田舎から田舎へ
- ブクステフーデとシュニットガー
- バッハとオルガン
- 2000年 − 夏
- 2001年 − 夏
- 2003年 − 夏
- バッハのオルガン作品 クラヴィーア練習曲集第3巻(通称「オルガン・ミサ」)、18のコラール
- バッハのクラヴィーア作品 《平均律クラヴィーア曲集》第I巻、ゴルトベルク変奏曲、イギリス組曲、フランス組曲
- 第5章 神はいかにしてこの世に音楽を残されたか − 信仰と芸術 …p.327
- 改革教会と会衆賛美
- 信仰と芸術
- あとがき
- 鈴木雅明・ディスコグラフィ 2004年2月時点
- 鈴木雅明・演奏活動記録
バッハの曲がメインテーマであることはもちろんのことですが、先人・同時代の作曲家について触れられていることも多く、また、同業の演奏家についてもちらちらと出てくるので、さまざまなバロック音楽の作曲家・演奏家の足がかりにも、活用できます。
鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンのおすすめ名盤・CD
鈴木 雅明・加藤 浩子『バッハからの贈りもの』をご紹介記事の中でご推薦したのは、以下の品点。これらも本書に関係しますので再録致します。
・輸入盤CD 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.Bach:The Sacred Masterworks(10枚組)
・輸入盤CD 鈴木 雅明(ハープシコード) J.S.バッハ:インヴェンションとシンフォニア
・輸入盤CD 鈴木 雅明(ハープシコード) J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻(2枚組)
・輸入盤CD 鈴木 雅明(ハープシコード) J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻(2枚組)
今回は、これに付け加えての推薦ですが、まずはカンタータ。
カンタータは、既にCD40枚以上もリリースされており、どこから聞くか迷うところですが、出た順に順繰り聴くなら、
・輸入盤CD 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.Bach:Cantatas Vol.1
が、第一枚目。もっとも有名と言って良いかもしれない147番は、
・輸入盤CD 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.Bach:Cantatas Vol.12
に入って居ります。1,2,3・・・番と順番に収録されたわけではないので、月に一枚といったペースで、どれでもえいやっと選んで、ゆっくり何年にも亘って、聴かれるのがおすすめでしょうか。
輸入盤で、日本語の訳詞は入って居りません。日本語訳をどうしても手に入れたい場合は、
をどうぞ。
お次は鍵盤楽曲。バッハでもっとも人気の曲かも知れないゴルトベルク変奏曲とオルガン曲。
・輸入盤CD 鈴木 雅明(ハープシコード) J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
・国内盤CD 鈴木 雅明(オルガン) J.S.バッハ:トッカータとフーガほか オルガン名曲集
ハープシコード(チェンバロ)と言うと、一昔前の著名録音を聴いて、あまりその音に興味が持てない方もいらっしゃるかも知れませんが、ここ10年で随分楽器自体も研究が進んで随分かわったようです。悪い印象がある方には、この録音などをぜひ!
曲自体も楽しい曲ですが、チェンバロがこんなに表情豊かなんだと、その点でもおすすめできる録音の一つと思います。
オルガンも前掲書の記述で、「昔ながらのパイプオルガンと現代のパイプオルガンは別物なんだ・・・」と知って驚くところ。ですが、この録音には、18Cにヨアヒム・ワーグナーが建造したドイツはアンゲルミュンデ市のパイプオルガンを使用。豊かな音色をぜひお楽しみ下さい。
鈴木氏のオルガンでの録音には、バッハではありませんが、16C〜17Cのオランダのスウェーリンクのオルガン曲集も出て居ります。
・輸入盤CD 鈴木 雅明(オルガン) Jan Pieterszoon Sweelinck:Psalms from Geneva
指揮であれ、鍵盤であれ、鈴木雅明氏のものは、丁寧に一曲一曲の表情を変えていき、テンポが速いですとか、遅いですとか、そんな一言であらわせるようなものではない大変豊かな内容と感じます。妙な誇張がなくとも、音楽がこんなにドラマティックなんだ・・・と教えてくれる貴重な演奏ではないでしょうか?
ぜひお手にどうぞ!
バッハのカンタータについて、その他のおすすめ書物:
カンタータは、教会の折々の催事のために作曲されたもの。キリスト教の歳時記について知識があると感じられることもまた一つ変わるかと存じます。
・八木谷 涼子著『キリスト教歳時記―知っておきたい教会の文化 』(平凡社新書)
・樋口 隆一著『バッハの四季―ドイツ音楽歳時記 』(平凡社ライブラリー)
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