バッハ入門に最適の本では?・・・と、バッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者、鍵盤楽器奏者、音楽研究家の鈴木雅明氏の著作を二冊ご紹介したところですが、
鈴木 雅明・加藤 浩子著 バッハからの贈りもの −バッハ入門に最適!
鈴木 雅明著 わが魂の安息、おおバッハよ!− バッハをもっと知りたい方へ
本日は、鈴木雅明氏の弟さんにあたるチェリスト 鈴木秀美氏の著作
をご紹介致します。
ご尊兄の雅明氏の二冊は、合唱曲、管弦楽曲、そして、鍵盤楽曲をおもに扱っていましたので、メジャーなジャンルとしては、「弦楽器は・・・?」と気になるところ。
そこをうまく補完するのがこの書籍。演奏会のパンフレット、レクチャー・コンサートの講義メモ、CDジャケットの文章を集め一冊と成したものです。秀美氏は、チェリストでいらっしゃいますから(近年は指揮者としてのご活躍も)、チェロの奏法、チェロの楽曲がトピックの中心になりますが、広く弦楽器の話として読んでみても興味深い著作です。
いわゆる“古楽”演奏について、オリジナル楽器を扱うとはどういうことか、なにが得られるのか、バッハの無伴奏チェロ組曲を中心にその面白さとは何か、奏法で顧慮するところはなんだ・・・と話は多岐に及びます。まったくの印象的感想から、専門的なあれこれまで、門外漢にも判りやすい言葉で、一流の演奏家の考え・感性を率直に語ってくれる好著。この点、雅明氏の著書と同様に、強くおすすめしたい所存です。
鈴木 秀美著、『古楽器』よ、さらば!増補改訂版 目次紹介
では、目次の詳細をご覧に入れますと・・・
- 第1章 チェロの名曲を訪ねて …p.8
- 食べる音楽?
- バッハ:無伴奏チェロ組曲について
- バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲演奏によせて
- もう一つの財産、C.P.E.バッハ
- ハイドン:チェロ協奏曲
- 笑うベートーヴェン
- シューベルト:アルペジォーネ・ソナタ、ベートーヴェン:ソナタ第3番
- 19世紀の知られざる名曲
- 第2章 オリジナル楽器とバッハ …p.76
- 大きく豊かな音、オリジナル楽器!
- オリジなるってどういうこと?
- 「真打ち、バッハ」
- 新しくて古い楽器
- バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番
- 語る音楽 バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番
- バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番
- バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番
- バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番
- バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番
- 第3章 ガット・カフェ、その他 …p.154
- ガットと弦楽器
- 「ガット弦」余話
- ガット弦とのお付き合い
- 「ガット弦」を弾いてみたら・・・・・・
- エンドピン・ストーリー
- バッハの弦楽器
- クラシカル・バッハ
- クァルテットの愉しみ
- ピエール・アンタイ氏のこと
- 飛行機、世のスピード、騒音・・・・・・の話
- LPBCJ
- Fruit Flies
- ベートーヴェンのあと
- あとがき
- 増補改訂版によせて
- 鈴木秀美ディスコグラフィ(増補改訂版では、2007年までの録音を網羅)
目次のタイトルだけ見ていてもとっつきやすそうで、内容に興味がわいてくるのでは?面白さ・読みやすさに、あっと言う間に終えてしまうのが、惜しいほどに感じました。
曲目に関しては、大バッハ(J.S.バッハ)のみならず、C.P.E.バッハ、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトと、古典派から初期ロマン派の曲まで話題にのぼっており、「チェロの曲はどういったものがあるのだろう・・・」とお困りの方にも、この鈴木 秀美著 『古楽器』よ、さらば!は、具合のいい道案内となるかと存じます。
鈴木秀美氏のおすすめ名盤・CD
折角ですから、鈴木秀美氏のおすすめ名盤を!録音数も結構な数になっておりますが、上述の書籍でおもに取り上げられた曲目で挙げるならば、まずはソロの曲はなんといっても、
・鈴木秀美(Vc) バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) [Hybrid SACD]
現在、旧盤・新盤の二種類の録音がありますが、2005年の新盤を挙げておきます(旧盤は、1995年録音でこちらになります)。
次は、室内楽ですが、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲を収めたアルバムがリリースされております。
・鈴木秀美(Vc)・小島芳子(Fp) ベートーヴェン : チェロとピアノのための作品全集
ヴァイオリン・ソナタの陰に隠れて、今ひとつ日の目があたっていない、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ。前掲書の中で、いままでこの曲が取り扱われてきた方法と一般的な印象に疑問を呈し、初演時同様の新鮮さをもたらせたら・・・と綴っておられますが、ぜひその演奏をお愉しみ下さい。共演は、小島芳子女史によるフォルテピアノ。
次は協奏曲から。
バッハとベートーヴェンの間をつなぐ、重要なチェロ曲を書いた一人と鈴木秀美氏がかんがえるのが、バッハの息子のC.P.E.バッハ。そのチェロ協奏曲の録音はこちらです。
・輸入盤 鈴木秀美(Vc・指揮)/バッハ・コレギウム・ジャパン C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲集
なかなか耳にしない曲ですが、存外面白いもので、ぜひご一聴を!
この頃の曲で、同じく協奏曲ですと、ハイドンのチェロ協奏曲も。
・輸入盤 鈴木秀美(Vc) クイケン指揮/ラ・プティット・バンド ハイドン:チェロ協奏曲第1番&第2番、協奏交響曲変ロ長調
この他、バロック期〜古典派期のものは勿論、19世紀の楽曲も様々録音があり、また、指揮者としてはハイドンやモーツァルトを中心に録音がすすめられております。
鈴木氏の著作とともに、録音もさまざま楽しんでいただければ幸いです。
鈴木秀美の他の著作:
・鈴木秀美 著 ガット・カフェ―チェロと音楽をめぐる対話
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