ゴダール DVD Box PartI / PartII / PartIII
映画で使われたクラシック音楽の話、第一回。
映画からは誰を最初に取り上げるか、いろいろ考えた末、ジャン＝リュック・ゴダールを取り上げることにいたしました。
20年ほど前、『カルメンという名の女』（単品・Box PartIII）を見た際、この人はいろいろとクラシック音楽を聴いて、感じて、考えたのだろうと、そんな印象を持ちました。
後から知ったことですが、この映画自体、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲に触発されてできたものでもあるそうです。(『ゴダール全評論・全発言II』 筑摩書房 p.559）
他の作品を見ても、とある場面でBGMとして流れる曲や、登場人物がふと耳にする曲などに、たんに場面の雰囲気にあった曲というにとどまらない、ゴダールの趣味が感じられます。
そんなゴダールを最初に取り上げたら良いのでは、と考えた次第です。
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さて、ゴダールの使用曲。
わたしの記憶から、全体としてはジャズが殆どだろうという予想しましたが、あらためて調べてみると、以外なほどクラシック音楽が多いことが判りました。
『ゴダール全評論・全発言II』の巻末データを参考とすると、作品数は５０余。その中でクラシック音楽が使用されているのは、18作品。*1 作品の内容を考慮すれば、これはかなり高い数字と思われます。
曲目も、バッハの『ブランデンブルグ協奏曲』もあれば、モーツァルトやシューベルトのピアノソナタもあり、ドヴォルジャークのピアノ協奏曲、シュトックハウゼンと、バロックから現代音楽まで幅広く扱われています。
その中でも、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、計4作品に繰り返して取り上げられおり、特別に愛着が深いと言っても良いものでしょう。
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おすすめ名盤となると、往年の名盤になりますが、私が長らく聴き続けてきたのは、ブダペスト弦楽四重奏団の二度目の全集。音がかちっとしていて固いという人もいるようですが、わたしはフレージングがしっかりして時にユーモラスに時に幻想的にと素晴らしい演奏と思い、これで聴くことが多いものです。しかし、残念ながら、長らく在庫切れ。
2007年11月追記：
ソニー・クラシカルから、在庫切れだったブダペスト弦楽四重奏団の名盤が再発売されました！この機会に是非ご検討されてはいかがでしょうか？
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ステレオ録音)
ブダペスト弦楽四重奏団
・国内盤
後期の６曲のみですが、アルバン・ベルクＳＱも教えを乞うたラサールＳＱ。これは四人のきっちりとしたアンサンブルの上に、軽やかによく歌う演奏。
Beethoven: Late String Quartets [Box set]
LaSalle Quartet
・輸入盤
こちらも長らく在庫切れのようで、中古に探すほかないようです。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲など、基本中の基本の曲目ですし、ブダペストＳＱの録音も、ラサールＳＱの録音も、名盤の誉れの高いもの。出しても売れないというマーケティング的な判断なのでしょうか？昨今、クラシック音楽が見直されているようでいながら、ちょっとさびしい気がいたします。
輸入盤で良いものがございます。もう一つ、第一級に推薦に値するのが、カール・ズスケが第一ヴァイオリンを務めた、ズスケ・カルテットの録音、近年安価で再発売され、手に入り易くなったのは有り難いことです。
このカルテットは、ゲヴァントハウス管弦楽団から、ベルリン・オペラに席を移したズスケが主導して創立された楽団。後に、ベルリン・カルテットと名前を変更して居りますが、現在商品名では、ズスケ・カルテットに統一されているようです。
Beethoven: String Quartets Complete and Trios(10枚組)
Suske-Quartett
・輸入盤
ご存知の方には、いまさらでもありますが、バランスがよく、丁寧で、なかなか今は求め難い名演。ぜひどうぞ！
*1 この書籍では、1985年公開の『ゴダールの探偵』までを挙げているので、現在の数字は幾らか上がります。