本日のご紹介は英国グラナダTV製作のシャーロック・ホームズ・シリーズ。
ジェレミー・ブレッド扮するホームズが、あまりに適役で話題になりました。いまだ人気があって、世界各国で再放送されているようです。
綿密な時代考証により、ヴィクトリア朝の衣装風俗が再現され、郊外を舞台としたストーリーでは、いまも変わらず残っているイギリスの美しい風景が目を楽しませます。
日本ではNHKが放送。ホームズの吹き替えは、日本の名刑事 “山さん” の露口茂が担当。これはこれではまり役で、評判になったものです。
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さて、本日pick upする《入院患者》は、このホームズ・シリーズの中でも、名作の一つに数えてよいものでしょう。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲がドラマのムード作りをうまくサポートしています。特に終幕で、この曲を練習するホームズの調子はずれな音にいらいらするワトソンとのやり取りは、私も大好きな場面の一つ。
このTVシリーズすべてに言えることでもありますが、些細や言葉や表情まできちんと演出されて、実に見事と今でも関心いたします。
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名曲だけに名録音も数多く出ておりますので、さまざまなカデンツァから一枚ずつ選んでみたいと思います。
もっともオーソドックスなカデンツァはクライスラーでしょうか?録音状態がいま一つですが、フルトヴェングラーの控えめなようで雄大な伴奏が、メニューインのなだらかなヴァイオリンを引き立てます。
Beethoven; Mendelssohn: Violin Concertos
Y.Menuhin(Vn), W.Furtwangler(Cond.)
Philharmonia O.(Beethoven),
Berliner Philharmoniker(Mendelssohn)
・国内盤
・輸入盤
次には、ブラームスの友人であった19世紀の名ヴァイオリニスト ヨーゼフ・ヨアヒムによるもの。
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 & Romance第2番
H.シェリング(Vn), H.シュミット=イッセルシュテット(Cond.)
ロンドン交響楽団
・国内盤
情熱的なフーバーマンは、自作のカデンツァで、ジョージ・セルの指揮するウィーン・フィルと名録音をのこしています。1930年の録音ながら、熱気が伝わってくるようです。
現在、Naxosから出ているものをリンク致しました。これにはドイツ時代(!)のウィリアム・スタインバーグ指揮シュターツカペレ・ドレスデンとのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も収録。こちらも実に激しい、そして、素晴らしい演奏です。まだお聴きになっていなければぜひどうぞ!
古い録音を敬遠されてきた方こそ!と思ってしまいます。
Beethoven, Tchaikovksy: Violin Concertos
B.Huberman(Vn), G.Szell(Cond.) / VPO, W.Steinberg(Cond.)/Staatskapelle Dresden
・輸入盤
ベートーヴェン自身は、この曲に関しては、ピアノ編曲版のカデンツァしか作成しておりません。現代の名手クレーメルは、このピアノ用カデンツァを自ら編曲して録音に用いています。ピアノやティンパニも登場する異色の仕上がり。
指揮はアーノンクール。ロマンス二曲がカップリングです。
Beethoven: Violin Concerto & Two Romances
G.Kremer(Vn), N.Harnoncourt(Cond.) /
Chamber Orchestra of Europe
・輸入盤
最後に挙げるのは、同じくクレーメルがネヴィル・マリナーと組み、現代作曲家シュニトケによるカデンツァで録音したもの。このCDは、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲とのカップリングで、そちらの伴奏はコリン・ディヴィスとバイエルン放送響。ベルクの録音も評判が高いものです。
Beethoven; A.Berg: Violin Concertos
G.Kremer(Vn), Sir N.Marriner(Cond.)
Academy of St.Martin in the Fields他
・輸入盤
最後に一つご紹介するのは、ちょっと変わり種。1920年代の古い録音で、若きフルトヴェングラーがベルリン・フィルのコンサートマスターに招聘し、数年でソロに転じたヨーゼフ・ヴォルフシュタールの録音。ヴィブラートが少ない、今の我々には変わった変わって聴こえる奏法。古いもので音質は悪いものですが、そのフレージング、アゴーギグ等々聴いていて、新鮮で大変面白いものでは?
Beethoven: Violin Concerto & Romance F Major / Mozart: Violin Concerto No.5
J.Wolfsthal(Vn), Manfred Gurlitt(Cond.)他
Berlin Philharmonic Orchestra, Berlin State Opera Orchestra
・輸入盤
ぜひどうぞ!
他にも、さまざまな録音があります。ちょっとマイナーなところで言うと、D.シトコヴェツキー Dmitry Sitkovetsky(クライスラーのカデンツァ)はすっきりとしたさわやかな演奏で楽しませます。ロマンスが二曲(ト長調とイ長調)付き。上のクレーメルのものもそうですが、ロマンスが二曲あるものは結構ないものです。
最近の録音で言えば、ヒラリー・ハーン Hilary Hahnも抜かすわけにはいかないものでしょう(こちらもクライスラーのカデンツァ)!
ぜひLook4Wieck.comの検索頁をお役立てください。
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