先週に引き続き、SF系学園サスペンス風ラブ・コメディ(?)『涼宮ハルヒの憂鬱』から!
TV放送全14話の中で、クラシック音楽が使われたのは、先週記事にした第11話《射手座の日》と今回取り上げる最終回第14話の《涼宮ハルヒの憂鬱 VI》。
ヒロイン ハルヒの不思議な能力の一つで、現実世界が気に入らないと、彼女は亜空間を生成してしまいます。そこは、不思議な巨人が町を破壊する世界。亜空間の出来事ながら、それが行き過ぎれば、世界全体が彼女の思うままにリセットされてしまいます。
こういう設定も、思春期ならではの半ば”抽象的”な焦燥感や、”ゲーム世代”のような文化的な記号を、なかなか上手く取り込んでいるなと感心します。
そんな彼女をどうやって、キョン君他の友人が食い止めるか!?この錯綜したストーリーの結末はぜひ皆様ご自身でお確かめ頂ければと思います。
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暴れ狂う巨人と共に流れるのは、マーラーの交響曲第8番の荘厳な合唱です。これが場面にぴったりの好選曲。
自分は雰囲気がマッチしているという程度で感心してましたが、先週ご紹介した『涼宮ハルヒとクラシック』という記事では、歌詞とシーンの重なり合いの妙もあると、面白い分析がなされています。ぜひご覧ください!
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最終回を盛り上げているマーラーの交響曲第8番は、交響曲というよりはむしろオラトリオ ー 簡単に言いますと、コンサート形式のオペラのようなもので、宗教的な素材が多いです ー とも言いたい作風。しかし、管弦楽の重厚さは、伝統的オラトリオとは異なります。題材としては、第一部ではカトリックの讃歌を、第二部ではゲーテの『ファウスト』を比較的自由に扱っています。
初演は1910年のミュンヘン。なんにせよ大掛かりな編成で、俗に《千人の交響曲》とも言われ、その8割方の数を占める合唱団が居並ぶ姿からして劇的。
大変荘厳ながらもメロディは聴きやすくファンも多い曲ですが、ちょっと苦手と思う人も居られるかと思います。いずれにせよ、マーラーらしさの一端を示した大作と言えるでしょう。
では、マーラー交響曲第8番の名盤・推薦盤のご紹介と参ります。
先日、ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』の記事で、バーンスタインとテンシュテットそれぞれのマーラー交響曲全集を取り上げました。この第8番も当然その中に含まれて居りまして、どちらも立派!な録音。バーンスタインであれ、テンシュテットであれ、一番に押す人も多いかと思います。
その他に探せば、下のゲオルグ・ショルティの録音は、特に20年ほど前までは、定番として不動の地位があったと思います(写真は輸入版)。好き嫌いはあるかと思いますが、くっきりとした表現で、劇的なのは確かでしょう。
マーラー: 交響曲第8番《千人の交響曲》
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 / シカゴ交響楽団
L.ポップ、H.ハーパー、Y.ミントン他
・国内盤
・輸入盤
・交響曲全集 国内盤
録音はかなり古いものですが、ミュンヘン初演に立ち会い、アメリカ初演を指揮したストコフスキーの録音ものこっています。Hi-Fi嗜好の方はお薦めし難いのですが、これはこれで私には清澄な場面などは特によいできと聴こえます。
Mahler: Symphony No. 8
L.Stokowski(Cond.)/Philharmonic Symphony Orchestra of New York, C.Alexander, M.Lipton, G.London他
・輸入盤 Archipel
・輸入盤 Music&Arts 他にドビュッシー夜想曲等収録
ギリシャ出身のディミトリー・ミトロプーロスの録音も古いものですが、これも音質を気にされない方には一聴の価値あり!劇的ですが、ドラマに流されません。各声部の取り扱いが巧みという評価もうなづけます。ミトロプーロス自身の最後の録音で、メジャーとは言えないまでも、愛好家には高く評価する方も居らっしゃいます。
Mahler: Symphonie No. 8
D.Mitropoulos(Cond.)/Vienna Philharmonic Orchestra, Hermann Prey, Otto Edelmann, Hilde Zadek他
・輸入盤
ストコフスキーもそうですが、世紀末から20世紀初頭のモダーンに関して、往年の指揮者には、なにか独特な時代感覚があるような気がして、私は結構気に入っています。
もう一つ、ご紹介よろしいでしょうか?最近、独グラモフォンからリリースされたブーレーズ指揮の新録音。実はこちらはまだ聴いていないのですが、ブレーズの演奏らしく、他の録音では聴こえないいろいろな音のラインが判って、今後、名盤・推薦盤として定着したものになるのではと(勝手ながら)期待しています!
Mahler: Symphonie No. 8
Pierre Boulez(Cond.)/Staatskapelle Berlin, Twyla Robinson, Adriane Queiroz, Tobias Berndt他
・輸入盤
2008年12月11日注:もう一つ、追加を。上に全集で言及したテンシュテットの録音ですが、DVDが出て居りました。視覚的に楽しむのもこの曲の醍醐味かと存じます。
EMI DVD テンシュテット指揮 マーラー:交響曲第1番&第8番(2枚組)。
オーケストラは、第1番がシカゴ交響楽団、第8番がロンドン・フィル。
情熱的でも、情に溺れず、、、テンシュテットの魅力でしょうか。
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さて、最後に少々脱線しますが、前回より度々触れております『涼宮ハルヒの憂鬱』のTV放送とのDVDとの順番の違いについて、触れておきたいと思います。
DVDは、ストーリーの時系列にきちんと合わせた順番なので、判りやすくなっておりますが、元々のTV放送とは順序が違っています。ではTV放送はどうかというと、制作者の遊び心で、時間が相前後する構成。これは一見ややこしいですが、それがミステリアスな雰囲気を高めたと思いますし、全14話トータルの構成としても、きちっとクライマックスを作り上げたと思います。
いまから、初めてご覧になる方には、是非ともTV放送順での視聴をお奨めしたいので、対応を下記致します。
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 朝比奈ミクルの冒険 Episode00
収録話:
1.朝比奈ミクルの冒険 Episode00 (TV放送第1回)
これは番外編的ストーリーです。
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 1
収録話:
1.涼宮ハルヒの憂鬱I (TV放送第2回)
2.涼宮ハルヒの憂鬱II (TV放送第3回)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 2
収録話:
1.涼宮ハルヒの憂鬱III (TV放送第5回)
2.涼宮ハルヒの憂鬱IV (TV放送第10回)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 3
収録話:
1.涼宮ハルヒの憂鬱V (TV放送第13回)
2.涼宮ハルヒの憂鬱VI (TV放送第14回 - 最終回にあたります)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 4
収録話:
1.涼宮ハルヒの退屈 (TV放送第4回)
2.ミステリックサイン (TV放送第7回)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 5
収録話:
1.孤島症候群 前編 (TV放送第6回)
2.孤島症候群 後編 (TV放送第8回)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 6
収録話:
1.ライブアライブ (TV放送第12回)
2.射手座の日 (TV放送第11回)
DVDタイトル: 涼宮ハルヒの憂鬱 7
収録話:
1.サムデイ イン ザ レイン (TV放送第9回)
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